【 RIKKA ~ LOVEISEXTRA ver.~ 】
木ノ葉の里に初雪が降った日。
久しぶり、でサスケが現れた。いつもの通り、どこか優雅な所作で巻物を投げ寄越し怒ったように言う。
「まだ居たのか。早く帰って、身体を休めろ」
「じゃあ。なんでお前は、ここに来たんだ?」
深々更けた闇に紛れ、忍び込んできた身体から凛と鳴る気配。黒い外套、黒い髪のあちこちを儚き白が彩っている。
もしも。一度でもどこかに立ち寄ったのなら、これほど冬は纏わない。必ずいるとこの場所を選び、真っ直ぐやって来たはずだ。
紐を外し拓本も確認する。貴重であるが急ぎではなかった。明日シカマルと相談すれば、充分対応できるだろう。つまりそのこころは、早く会いたかったってこと。
都合良く解いた結果、ナルトはくるり巻き戻した。とはいえ、他ならぬ彼が持ち帰ったものだ。至近の引き出し、雑多を退け丁寧に収める。視線上げれば堆い書類の向こう、サスケは黙然と佇んでいた。寒夜のせいか気まずさからか、鼻先だけがちょっぴり赤い。まるでこどもみたいな顔に、愛おしさが込み上げた。
椅子を蹴り、ほぼ揃いの丈に向かう。捕らえる身体は自分より少し、細やかだ。おかえり。両腕にくるみ囁くと、右手が左側に跳ねる。ぽん、と鳴るのがサスケの応え。ただいま。
それを合図に早速キスする。項から髪を梳き上げ頭まで抱え込むと、指先に凍みがきた。口唇もひどく固い。なんだかすごく切なくて、慌てて強く、舌で絡んだ。体温を分け与えるよう、前歯の裏奥歯の際まで深く添わせる。
「っあー、冷てェ」
ひと頻り舐め回した後、ナルトは背筋を震わせた。これは、想像以上に凍ってる。黒は熱を吸収しやすいと聞くけれど、もしかしたら冷気だって吸い込んでるんじゃないだろうか。何しろサスケは全身真っ黒、まさに黒いてるてる坊主。こんなで中身は大丈夫なのか。
「そんなに寒いなら、離れれば良いだろう?」
撫で続けるうち、散った結晶が水珠に変わった。爪はじいて遊んでいれば、呆れる呼吸がフッと零れる。常より白い肌の上、貪り合った口唇がほの赤く色づき、薄っすらと濡れていた。清廉な色香はいかにもサスケらしい。もう一度キスしてから、もっともっと、ぎゅっとしがみついてやる。
「嫌だってばよー。だって、やっとで帰って来たんだし。充電しねえと!」
身体を傾け、腹に頭をぐりぐりさせた。どこに触れても同じ感覚。やっぱり冷たい。だから早く、体温に触れたい。
求めるものと伝わるもの、相違に押されて侵入する。隙間に手を差し裾捲れば、焦ったように腰が引かれた。結んだ証が、カチリと硬質を響かせる。
「おい。ナルト」
「うわ、額当てまで冷てーな」
「―――ッ!」
腰骨を押さえつつ、馴染んだ肌を確かめる。下腹のうす鋼を素の掌で覆えば、背骨がふるっと緊張した。サスケほどではないが、ナルトも冷えていたらしい。驚くのは彼の番で、つめてぇ、と息を飲む。
「でも、お前の方が凍ってんな。ホラ」
指さきを移動し、臍のかたちを確かめた。みぞおちを撫でさらに上へ、中心線を昇っていく。囲った身体はそのたび震えた。指を追い肌があわ立ってくるのが解る。
寒さのせいなのか、それとももう、別の理由に拠るものか。辿りついた小さな突起は、既に主張を始めていた。上機嫌で摘まみ、口唇寄せる次の瞬間。
「っひゃぁあ!?」
叫び、ナルトは飛び上がった。慌てて仰け反り首筋庇うも、胸ぐら引っ掴まれて距離が縮まる。
「……冷たいと言っただろう」
いや、冷たいのはその声だ。まさに氷点下ゼロだ。
襟元に這わす右手を、素早く、シャツの袷から突っ込ませる。黒いグローブは素肌以上に冬だった。ぺたぺたされると喩えじゃなく胸がざわめく。残念なくらい色気無い仕草で、やらしい雰囲気など欠片もなくただ冷たくて、寒い。
「待て、待てってばよサスケェ!やめろ、止めてくれ!!」
「無様だな、ナルト?」
「だから、冷てェ……って!?ひゃは!?」
掴みかかると振り払い、サスケは隙なく脇腹を狙う。きり、と張った眦が見間違いみたいに緩んでいた。口元も僅か綻ばせ、指遊ばせて更にナルトを悶えさせる。
どうやら、焦る姿が随分お気に召したらしい。冷たいのとこそばゆいので身を捩れば、絶妙の間合いでひざ蹴りされる。クソ。相変わらず、足癖の悪い奴め。
こうなれば、ナルトだって火がついてしまう。敵前逃亡など言語道断。接近する身体を許し慎重に引き付けてから、反撃開始だ。
「……ぅひッ!」
「へへ。どうだ、サスケちゃんよォ!?」
超高速で上からみっつ、ボタンを外した。鎖骨に沿い、腋を押し上げ侵入する。まさか、長年の研鑽がこんな時こんな風に活かされるとは、思ってもみなかった。
黒いシャツを肌蹴させお返しにこちょこちょしたら、ぷはっと息吐いたサスケが恨めしそうに睨みつける。
「くそ……ッ。この、ウスラトンカチが!」
耳慣れたその言葉は、いつだってナルトを満たしていく。他人が聞けばただの悪口だろうけど、この上なく大切な証なのだ。サスケが帰って来たんだ。実感させてくれる、ひと言。
弱点なんて知りすぎている。暴き、疼かせ合って肌震わせる。意地っぱりなのはお互い様。やがて二人して吹き出した。
軽口叩き笑いながら、そんな遊びをしばらく続ける。馬鹿馬鹿しかろうが奇妙だろうが、そんなもの関係無い。擽ったくて面白くて、楽しくて仕方がない。そう。いい歳した大人だって、たまには騒ぎたくなるのだ。気がついたら床に転がり、それでもまだ、じゃれていた。
ぶつけるようにキスを交わす。露骨な舌が珍しくねだり、戯れの延長線上、誘われるまま口唇で擽り合った。耳朶を舐め、孔もくじれば押さえ込んだ身体が捩れる。すかさず体勢を入れ替えられ、今度はサスケが、ナルトの上に腰を据えた。
かぷ、と咽喉ぶえ食らわれる。甘い痛みが恋を燧ち、貪欲を導火に本能滾らせる。示すように下腹を突き上げ、彼のソコへと押し付けた。同じくらいに、かたい。それでもサスケは嫌がらない。むしろ自ら、その卑猥な動作を真似た。
凍えた頬は血色纏い、いつしか目じりまで赤い。硝子越しの冬空映すのは、純なきらめきではなくケモノじみた光だ。瞬く睫毛も忙しない。口説きは野暮でささやきも不要。もう、スイッチは切り替わった。
続くキスはあえてゆったり、濃く細やかに与え受け取る。流れ込む唾液を味わいながら、ぐちゃぐちゃな服を剥がし合った。まだ凍えてるここも冷たい。重なる肌が、より確かを求めている。小さな突起を捏ねくれば、んぅ……と咽喉奥でサスケが啼いた。
ふと気が付いて、動きを止める。辿っていた指を掲げ鼻を鳴したら、伏せた瞼がひそやかに持ち上がった。
「……なんだ?」
さっき、脇を擽ったせいだろう。普段ならナルトより薄い汗が、掌に残っていた。女のほのかではなく、紛れもなく、同じ性を持つ者の主張。それなのに惹きつけられ、より昂って仕方がない。あぁそっか。これってば、フェロモンってやつかな。
「サスケの匂い。たまんねぇな」
率直な感想を述べたら、撓った脚が裸の背を上手に蹴った。
◇
ゆるやかが熱と変わり、吐息は淫らに染められる。白い肌が震えている。両脚広げて雄を呑み、つま先で焦れていた。
「お前さ。キレーな顔してんのに、けっこうデカいよな。色もやらしいし」
―――なあ。自分で、見てみろよ。
甘ったるく命じれば、呆れたように眼が眇む。羞恥や惑いすら表さず、示しに従いナルトを見遣った。
「だから……ッ。ここで、したかった……の、か?」
「偶然だってばよ!でもまぁ、せっかくだし」
ごまかし茶化しながらも、動かす腰を休めない。それでもサスケは前を向く。ぁ、ァ……と切れ切れで応えつつ、平面が映す自分たちを繋がる箇所を、眺めていた。
火影室の奥、仮眠スペースに行く余裕など無かった。だからそのまま交わった。そうしたら、ここにはコレがあったのだ。大人の背丈以上、大きな姿見が。
「見えてるか?サスケのココ、すげえ拡がってる」
「っン。は、ぁッ」
「お?もっとヒクヒクした。興奮してんの?」
「はッ……。お前、こそ」
ぎゅっと強く、奥がすぼまる。負けん気に呻けばここぞと潜まる声は低く、自ら手繰り玩んだ。
「いつもより、デカいんじゃ……ないか?」
鏡の中、意味深な口唇が問う。鳴る肌音と拍を合わせ、五指であやして双球を揉む。まるでさっきのじゃれ合いみたいに、彼はやたら、愉しげだった。
「刺激がなきゃ……ッふ、出来なくなった、か?」
したたる粘液、首筋にひとすじの汗。喘ぎを化かして言葉と装い、咥えた襞を確かめながら、より猛ろと仕向けてくる。
「ッ、言うじゃねーか!」
ことさら晒し見せつけられて、負けるもんかと奥歯を噛んだ。肩を捕らえる。綺麗に仰け反る顎を掴み、キスを奪った。振り向きざま、乱雑で唾液があふれ咽喉まで流れたが知るか。包帯の汚れも気にせず、胸元まで塗り広げる。
「下手な煽り方すると。後で泣くぞ、サスケ?」
確かに無茶はしなくなった。セックスを覚えた頃は、真昼間でもどこでもすぐに、だったが最近は違う。疲れきった互いを抱きしめ、ひと晩そのまま、寄り添い眠ることもある。
とはいえまだまだ、現役なのだ。いや。そんな、枯れた表現など無縁。サスケといるなら死ぬまで男盛りだ。
示すため深く沈み、引いて突いてを繰り返す。何度も続けて奥を狙い、突端押しつけぐりぐりした。好きな刺激好きなされ方。そんなのもう、とうに知ってる。
「―――ッく!?」
「だめ。自分がどんなツラで感じてんのか、ちゃんと見とけ」
鏡面の彼は口端を噛み、必死で声を飲んでいる。乱れた黒髪の隙、すみれ色の輪廻がたわみ猫のように細まった。もう一方では凄烈な黒が、熱で潤んで溶けている。
ほら、ギリギリだ。場所がどことか立場どうとか、常識だの理性だの何もかもかなぐり棄て堕ちてくるまで、あともう少し。
しかしサスケは首を振り、境界で耐えていた。雄の証は硬く反り、蜜にまみれて濡れ光る。胸の粒も赤く腫れ、窄まり震わせすべてを映しながら、それでもまだ己を保つ。
「ナル、ト」
呼ぶ声は、性歓の抑制か掠れていた。今度は自ら首巡らせ、無理くり腕を絡め口唇を求める。呼吸の限り溺れた後、ゆったりと耳朶が食まれた。せっかくだから、言ってやろうか。艶然とささやく。
「なぁ。もっと食えよ、オレの火影」
それはただの睦言で単なる戯言。だがナルトは、息吸いこんだ。胸掴まれて吐くのを忘れる。淫らでありながら真摯な響きに、捧げられる誠実に鼓動がくるおしく鳴る。
あぁ。どうして。
どうしてここまで、何故こんなにも彼は自分を惹きつけ、いつもいつまでも、離さないのだろうか。
込み上げるのが歓びか、恋情か愛着かそれとも独占欲なのかなんて、解らない。強烈な餓えに支配され、抱えた身体を押し倒す。獣のかたちで交わればやさしげな眼が一転、睨み抗った。この様を、サスケはあまり好まない。
「ッ!?いきなり何す、あッ、くぅっ!」
逆らう頑なは悲鳴が連れ去る。心地よく聞き、伝う涎を満足で見つめながら激しく腰振りがむしゃらに抉った。
片っぽだけで身体は到底保てない。散らかした白い外套を引き摺り、床の上、途絶えた左腕の下へと丸め込めた。それだけの許しで、ナルトはより行為を高め更に荒ぶる。
「ゃ、ソコ……っ。そこ、止めッ」
「何で?奥苛められるの、昔っから好きだろ」
「ヒっ!?ゃぁ、ァ、あぁ、あぁっんッ!」
「すげえ。先走りも、床まで垂れてる……」
背後からを拒むのは、体感が過ぎるせい。弱点の沸点を突きまくり追い詰めるうち、サスケは声すら失った。はぁッ、はぁ。呼吸のみを繰り返し、強烈な悦に悶えている。
押されるまま崩れた身体は貼りつく掌で保たれる。まだ深く、最奥まで這入りこめば汗ばむ額がコツリと鳴った。冷えた鏡面に吐息が熱い白を結ぶ。ナルトの眼には、まるでサスケ同士がキスを交わすように映った。なんとも奇妙で倒錯的な、そんな眺めが堪らない。身を屈め、ふるえる背骨に口唇を落とす。尖りの数だけ緋を散らした。
「今日。このまま、イク?」
内壁が吸いつき勃起を貪る。欲する絶頂は明らかなのに、黒髪がふるりと俯き目隠した。滲む官能を殺すように、微か開いた口唇まで噛み締められる。そのくせ卑猥な動きは留めず、身体はもっとを求めてくるのだ。しなやかな腰がナルトへと擦り寄り、誘いに乗って揺れている。
それはあまりにも淫蕩。思考より本能、選び浸るこの淫らは、しかし一人しか知らないのだ。どんな赤裸々な姿勢だろうがどれほど厭らしく喘ぎ啼こうが、許す相手はナルトしかいない。いかに乱れ狂ってもどこまでも貞淑で、果てなく純な身体だった。
そう思えばたまらなかった。彼へと向かうすべてがひとつに集約され、餓えを充たして心を掬い、愛しさで繋がれる。
「っく、はッ!ナル、ト。なる……」
「わかってる。オレも好き。大好きだってばよ」
好きだ。ひたすらに繰り返す。今までこれまで、何回何十回言っただろう。これから死ぬまで何百回、死んでしまってあの世でだって、何億無数で叫びたい。好きだ、大好きだサスケ。応えはないけど頷いている。それが答えと響くから、宣言し促した。
「出す、ぞ。出せ、サスケ」
「……ん。あァ、いッッ!」
迸る精はそのまま彼へと降りかかる。熱に引かれ、サスケも身体を波打たせた。白い背中がしなり腰がびくつく。ナルトとの行為に備え、自涜は慎んでいたのだろう。ビュッと吐いた後、震えながら更に数度、小さな射精を重ねている。鏡にも飛び、斑点はとろりと線で滴った。
汚れた肌を素の左手で拭ってから、触れた。柔く掴んで最後のひと雫まで絞り取る。
「ほら。いっぱい」
指に粘つき手首へ流れる。しばし朦朧と眺めてから、サスケは自ら舐め取った。ふたり分を旨そうにしゃぶり、膝をこすり合わせるのは未だ足りない証拠だ。ナルトの雄が浮かぶのだろう。蠢く舌は後始末を越え、顎を前後し絡めて引いて、夢中になって耽っている。丸みの裏側、くじれば悩ましげに啼いた。見上げてくる眼はせつなげで熱っぽい。
「あ。また、勃ってきた」
「……うるさい」
糸引きながら掌を引き、ふやけた指で頬を突く。ソレも突っつき捲くれた先っぽにキスすれば、たちまちで芯が通った。咥え、奥まで飲んで可愛がる。欲しがりの窄みもまだ赤くて、嬉しそうに収縮を始めた。引っ掻いたら、軽い拳が打ってくる。オレも。ぶっきらぼうな目じりが照れてる。
「だめ。そのまましただろ?」
「しかし、」
「いいってばよ。これで」
返そうとする健気も反する摂理を消せやしない。大切だから大事にしたくて、完全成すまで育ててやった。等しい気持ちがこちらにも絡む。互い違いで寝そべり、口と指で施し合った。頬を寄せ、ナルトが好きな位置を刺激してくれる。
絶妙な力加減に、オレたちいったい、何回目だろうと思う。初めての頃は扱くばかりで、サスケはちっとも上手じゃなかった。でもやっぱり、精いっぱいだった。
そろそろ、が重なる不思議もう一度を始める呼吸。ふたたびのセックスは余裕があるから心地いい。ほぼ揃い、実はほんのちょびっとだけ負ける背丈を重ね、脚を巻きつけ口唇逢わせる。右の腕は空いているけど、見えないけれど左が絡む。
何回目だろう。暦にしたら、毎日マルがつくだろうか。本音は毎晩、彼を抱きたい。本当はずっと一緒にいたい。
「……サスケ、」
ぴとりと当て見下ろす。右腕が睦み求める。潔く両脚を広げ、腰を浮かせて姿勢を作った。一番定番で捻りなくありきたりで、最も顔が見える体位。思う存分想いのまま、キスが出来るかたち。彼が好きな愛し合い方。
黒に青を映しながら、時間をかけて、全長で質量で埋めつくす。あまやかに声伸ばしうっすらと笑む恍惚を、他の何にも見せたくはない。両腕にくるみ肩で覆った。
自分勝手に気づいたのだろう。鎖骨を吐息でくすぐってから、サスケは愉しげに痕をふたつ、刻んでくれた。
◇
影分身とは便利なもので、浴室をあたため、ぐたっと果てたサスケを恭しく清めつつ、とっちらかった部屋も片付く。
運んだベッドは整っており、サイドボードには緑茶と水とおにぎりも四つ。問題を挙げるとすれば、どいつもうずまきナルトであることだろう。結局結論、それが大問題なのだが。
『オレたちいつも、こんなんだ!』
『オリジナルばっかサスケとヤりやがって!!』
『たまには替われってばよ!』
『あっ!サスケに影分身してもらえばいいんじゃねえか?』
『そっか。ナイスアイデアだってばよオレ!!』
『サスケ!ちっとやってみてくれよサスケェ!!』
物騒な台詞、少々試したくなる閃きを口々がなり立てるから、急いで指を組みボフンと消えてもらった。些か気の毒な気もするけれど、こればっかりは許せない。たとえ経験値が還るとしても例えば影分身だろうと、うちはサスケを抱くのは絶対に、自分自身ひとりだけなのだ。
シンと凍えて狭い中。布団にもぐり毛布を重ね、流れで身体を寄せ合った。
相談役の気配りで、仮眠用とはいえそれなりの快適は備えている。暖房具だってあるのだが、サスケは人工的な熱は嫌いだと言う。だから互いの体温で、指先つま先までを浸す。
気だるげな呼吸が艶っぽく鼓膜に纏わる。余すことなく聴くことが出来るのは、澄んだ静寂が満ちているおかげ。
窓の向こう。きっと雪はまだ、降り続いている。
分け合ったぬくもりに守られながら、黒髪を梳き、ナルトはこそり囁いた。
「なぁ。冬って、いいよな」
いつまで経っても初々しさを残すサスケはコトの後どこか気恥ずかしそうにしていて、普段ならここまで身体を委ねない。ナルトが言いくるめ、腕に抱き込むのが常なのだ。そして彼は、じりじりそれを待っている。
意地っ張りを溶かすのが、冷たさだなんて面白い。咽喉奥でくくっと笑えば、素早くキスで封じられた。
「早く寝ろ」
「うん。おやすみ、サスケ」
重なった口唇は、今は同じ温度を宿している。