ナルトのことを『意外性ナンバーワン』と、評したのはカカシである。それは今も変わらない、と彼は笑うし、サクラも似たようなことを言う。ほんとにアンタは、とんでもないことばかりするんだから。
だけどよく考えて欲しい。困ったり怒ったりする二人にフンと合わせるサスケだって、実はかなりぶっ飛んでいるのだ。
なにしろいきなり、革命だ!とか言い出したこともあったわけだし。
だから、革命ってなんだってばよ?サスケメイクスレボリューションでエボリューションか、注連縄結んでオレは世界を変えるのか。
もちろんそれは、所謂若気の至りで暴走する十代の感性。現在自分たちは、もう大人といえる年齢である。いろいろあったけれど、ふたり揃って無事上忍にもなった。ついでに言えば何故こうなったのかイマイチよく解からないまま、心身ともに末永いお付き合いを誓った仲なのだ。
勢いで始まったそんな関係だって、だけど順調に続いている。オンもオフも充実しているけれど、そんな日々の中、サスケはやっぱりどこかおかしい。妙なことを真顔でしたり、言ったりすることがけっこうあるのだ。天然、というか、なんかズレてんぞサスケェっていうか。
そう、今がまさにそうだ。
「……サスケ」
耳元に囁いて、それからチュッと吸い上げる。後ろから回した手でちいさな粒を優しく摘めば、ぁッ……と艶かで可愛い声が零れた。どうやら、ここで感じるのが未だ恥ずかしいらしい。小さなこどもがむずがるように、嫌だヤダと小刻みに首を振る。まったく、あのキリと張った隙無い強靭はどこへいったのか。肌を重ねて初めて知ったこのギャップは、ほんとにいつになっても反則である。
「あのさぁ。明日から、大丈夫か?」
すっかり骨抜きになっているのを自覚しながら、とりあえず懸案事項を述べてみた。同時に足の間もあやしてやる。風呂上り、まだTシャツと黒いボトムを着ているけど、その上からだって解かるくらい、胸もソコも持ち上がっていた。
「大丈夫、とは?」
「だから。オレ、帰って来るの来月だろ?」
それでも、言葉だけは常のとおり。きっちりした家庭環境で育てられたとよく解かる、砕けきれない固さが残っている。そんな部分もナルトはなぜか好きだった。
ふと、もっとキスがしたくなり、会話はいったん棚上げする。胸を弄る手を抜いて、頬に添え乱暴に振り返らせた。被さるように口唇を覆い、そのまま舌を絡め取る。それに負けじとサスケも応え、同じ動きを懸命に真似した。濡れた音を生々しく響かせながら、一頻り貪り合う。ボトムに沿った指を激しくすれば、もがく口唇の間から切なげな声と共に唾液が少し、零れ落ちた。
「明日から半月。サスケ、ひとりで大丈夫かなって」
顎まで汚すそれを指先で掬い、掬ったものをペロリと味わう。見せ付けるように舐め続ければ、白い肌に上る朱色はより鮮やかになった。普段はきつい眦まで、薄っすらと淡く染まっている。完全に、欲情を整えた顔だった。
唾液を充分に絡ませてから、口唇へと運ぶ。ためらわずそれを受け入れ、サスケは旨そうにしゃぶりついた。
何故、どうしてそうするのか。それを充分わかっているから、たっぷりと自分も液体を纏わせていく。
健気すら覚える一途さで舐められながら、時折あちこち刺激する。頬の裏側、前歯の後ろ。特に感じるらしい上顎を引っ掻いてやれば、頭が反って同時にソコまで固く張る。
「……っふ、」
「そろそろ脱ぐか?」
おそらくもう、インナーは汚れてしまっている。そしてこれ以上続ければ、もっと染みてしまうだろう。以前、我慢出来ずそのまま吐き出してしまった時。サスケはほとんど泣き顔だった。
その提案に、しかしゆるりと首を振る。咥えていた指を離し、爪先に軽くキスをひとつ。それから、至極真っ当な顔で言ってのけるのだ。
「戸締りは、きちんとする」
「……え」
「だから。裏口も風呂場も、施錠は必ず確認する。もっともこれは普段からそうだ。お前が居ても居なくても変わらない」
「あぁ……」
そっかぁ、うんうん。
曖昧に、つい苦笑するのがどうやらお気に召さないらしい。濡れた口元をフンと拭い、更に淡々と続けた。
「お前はたまに忘れているが、ガスの元栓など特に重要だ。爆発でも引き起こしてみろ。周囲まで巻き込み、多くの者が傷を負う」
ずっと一人暮らしをしていたわりに、その辺りの認識がまだ甘い。ポットもよく抜き忘れるし、この前は鍵を落としたじゃないか。
「……戸締りと火の始末って、ほんと大切だよなあ」
「当然だ」
にわか始まったお説教に、口では棒読み胸中にため息。
あぁ。ホラやっぱり、コイツはズレている。
ナルトが何を心配しているのかなんて、ちっとも解かっていない。これ見よがしに指を舐め、意地悪く囁いたつもりだったのに。
それに応えてやらしい仕草をするくせに、まったく以って無理解だ。いったい何故、誰がこの状況で暮らしの危機管理など持ち出すのだ。サスケがその辺りに長けていることは知っている。いやそもそも、盗っ人と鉢合わせても即座に縛り上げるだろう。
ガス爆発はもちろん危険だ。だが、ブチ切れた挙句放たれる豪火球の方がたいがいではないか(大喧嘩した際、こういった危険はよく訪れる)。
「そうじゃなくて、さぁ」
軽く腰を撫でれば、意を知る身体が従順に浮き上がる。素早くボトムを引き下ろす合間、彼は自らTシャツを脱ぎ捨てた。こういう些細な積極性が嬉しいところで、お前もと裾をつんつん引っ張られれば、もうたまらなく愛おしかった。
勢いよく薄い服を捨てれば、触れる大気は僅か寒い。なんとなくぶるっと震えて髪まで振れば、サスケが小さく笑う。
「なんだかお前は、獣みたいだなナルト」
胸に指を置き、擽るように蠢かせる。じっと見上げる黒が熱い。自分が宿す色よりも濃いから、温度だって高いのではないか。こういう時、よくそんな風に思ってしまう。
「動物なのは、一緒だろサスケ?」
ちぅっと、ちいさなキスを捧げる。それから改めてソコに触れれば、その眼差しもすぐに弛んだ。
「……ほら。もう、染みになってるってばよ」
「あまり……じろじろ、眺めるな」
視線を逸らし呟く様は、限りない征服欲を連れてくる。そっと差し入れ、確かめれば瞼が閉じた。あらゆる意味で敏感だから、自分の身体がどう変化しているのかに気づいているのだろう。質量を増して固く反り、我慢出来ない滴を垂らす。解かっているから、無視しようと努めるのだ。
「ちょっとキスして触るだけで、サスケはこんな風になるだろ?だから、オレってば心配なの」
「だから。さっきから……なにを、気に……ッ」
呟く言葉が、途中で掻き消える。全てを晒させ握り愛でれば、頬が染まりまるい吐息もすぐに零れた。
「すっげえ、ガチガチ。そっか……昨日とおとといは、シなかったもんな」
ゴメンな、サスケ。
いかにもそれらしく萎れてみたら、即座にギリと睨まれる。頼りない風情で羞恥を堪えているかと思えば、時に相変わらずの強がりが応える。どれほど睦んでも決して吞まれないその硬質は、やっぱりいつだって綺麗だった。
ちいさく開いた口唇が、ハッと短い息を吐く。戯言に悪態を返したいが、声を出せば別のものに成ってしまう。だからただ、こちらを見据え挑んでくるのだ。
それを阻むため身を屈めれば、察した掌が慌てて金色を掴む。引っ張り引き離そうとする、その力は本気だ。数本どころじゃなく抜けてるなと頭髪を憂うが、言い聞かせるにはこれが一番。
「ゃ……、やめッ!」
「二日開いたら、もうこんな。だったらサスケ、半月だったらどうなるんだよ」
「ふ……ぅ、ん、ンンッ」
たっぷりと舐めあげる度、照れた腰が捩れて惑う。だけど少しでも引けば、物足りないと押し付ける。息が詰まる程貪欲に、もっと奥までと求めてくるのだ。
「ぁッ……ア!ぁぁっ、やぁっ!!」
程なくサスケは、弄られるまま乱れ始めた。好きなトコロを苛められ、悦んで指を噛む。自ら身体を蠢かし、嬉しそうに性歓を貪った。もっと。ナルト、もっとソコ。
「ぃや……だ。まだ、まだ……ッ」
「まだイキたくねえの?出すより、気持ちイイ方がいい?」
絶頂を拒む理由は、少しでも長く快感を味わいたいから。まったく本当に、この男はイヤラシイ。
「しゃぶられんのも、しばらくオアズケだしな」
だから、思いっきりヨくなっとけ。普段なら、そんな風に締めくくるはずだった。
どちらかが里を離れる前夜、貯蓄出来るはずもないのに必死になって、馬鹿みたいに求め合う。隔たる時間も埋められるよう、刻めるように繰り返した。
だけど、なんていうか。
(サスケってば、ほんとに大丈夫なのかな……?)
ナルトナルトと名を呼んで、もっともっとと強いてくる。
こういう時の彼はとんでもなく赤裸々で、ぎりぎりのプライドさえ巧く崩せば、どんな淫らだって晒してくれた。前戯でさえこの感じよう。受け容れることに慣れた身体は、繋がればさらに悶える。その場所に当てようと自ら腰を浮かして雄を導き、はっきり明かした。
『ナルト……ッ!ソコいぃ、きもち、イイッ!!』
まさに獣のように啼き狂う、その様を思い出せばナルトのソレもぐんと張る。だけど、だから。
「あのさぁ、サスケ」
軽く先っぽを吸ってから、顔を離す。そして腕を引き身体を起こせば、浮かされた眼が不思議そうに瞬いた。
「……どうした、急に」
「んー。なんて言うか、さぁ」
ぎゅっと抱きしめ、ぽんと背中をあやす。つきさっきまでとは大違いな、ごくささやかな触れ合い。戸惑いながら、だけどサスケの腕も回った。おんなじように絡まって、ぽんぽんとナルトを撫でる。
「実はさ。ちっと、聞きにくいんだけど」
「いったい何だ?」
もごもご迷うなんて、お前らしくない。見つめる視線が先を促す。言ってみろと許してくれた。
だからナルトも腹を括る。本当は、けっこう前から気になっていた。それもちょっとどころではなく、ものすごく興味津々だったのだ。
「……あのさぁ、サスケ」
「だから、どうした」
「その……」
殴るなよ?絶対に、殴るんじゃねえぞ!
いちおう約束させてから、そして一気に吐き出した。
「お前さぁ!ひとりの時、どうやってシてんの!?前擦って出すだけじゃ、もう満足出来ねえだろ!!」
ほとんど喧嘩みたいに大声で喚く。あぁ。叶うならもっと艶っぽく、エッチな雰囲気で聴きたかったのに。
『なぁ。半月、ひとりで大丈夫なのか?』
『お前を想って自分でスるから、問題ない』
いつもそうだ。ナルトのことを考えながら、ひとりでシてる。
そしてふふっと意味深に笑い合う、そんな会話をしたかったのに。
それなのに、サスケときたらまったく。家内安全火の用心、どうして標語みたいになってしまうのだろう。だからもう、こうしてストレートに聞く以外、仕方ないではないか。
さて、文字通り火を噴くか雷を落とすか。攻撃しないと誓わせたが、意に添わなければ激怒するだろう。覚悟の上で、反応を待つ。恐ろしい程の沈黙をひたすら耐えた。
しばらくの間、静寂が続いた。そしてもうしばらくが経っても、彼は何も言わない。いつしかぎゅっと閉じていた眼を、ナルトは片っぽ持ち上げる。こっそりと窺えば、らしからぬ表情が見下ろしていた。
きょとん。まさにそんな顔で、訝しげに首を傾げている。
「サスケ……その」
オレの言ってる意味、わかる?つい問うてしまう程、こどもっぽい顔で困っているのだ。
「馬鹿にするな、当然解かる。つまり、どんな風に自慰をしているかということだろう」
「じ!?」
「何だ、違うのか?」
「イヤ違わねえ。違わねえけど、さぁ……」
正しい言葉は、時に隠語より破壊力を持つ。アッサリと述べられ、何故か自分の方が恥ずかしくなった。
あぁ、ホラ。やっぱりまたまた、コイツはどっかズレている。
とはいえ、それでもサスケはサスケなのだ。
「お前は、そんなことが知りたいのか」
非常に冷たく呆れられると、まったくもって居たたまれない。頼むから、どうか少しでも空気を読んで欲しい。オトナな遣り取りは難しくとも、ちょっと照れたり恥らったりを期待していたのだが。
「うん……けっこう、気になるってばよ」
それでも正直に強請れば、視線はますます温度を下げた。はぁ、と疲れたようにため息をひとつ。そういえば、チラと確かめたソレも少々お行儀良くなっている。
「どうもなにも……触って出して、始末して終わりだ」
「エッ、そんだけか!?」
「それ以外、いったい何を、どうするんだ?」
不思議そうに問い返されるが、さて何て言おう。彼の身体はもうすっかり、抱かれることに慣れている。雄に貫かれて揺さぶられ、内側から迸る絶頂を知っているのだ。
なのにただ、擦って果ててで耐えられるのか。行為の時、だいたいナルトは最低でも二度、導いてやっている。まず愛撫で射精させ、それから繋がってまた出させる。サスケもすっかりその手順に染まり、口や手でイカせた後でソコに触れれば、だいたいもう蠢いていた。次に訪れる快楽を待ち侘び、焦れったそうにヒクついている。
だからこそ、独り寝の夜が気になるのだ。雄の本来を遂げても、植えつけられたもうひとつの際は訪れない。そして、彼はとても一途に自分を想ってくれている。浮気なんて絶対にしないから、離れている間、ずっと耐えなくてはいけないのだ。疼く場所を我慢して悶えているのではと妄想に近い空想をすれば、下腹もキュンと鳴く。
「なぁサスケ。お前、それでちゃんと寝れてる?」
「当たり前だ。そもそも、そうしないとメカニズムが回らないから自慰をする。普段は……その、お前とシて……いるから、こと足りているわけだが」
ここへ来て、ようやっと照れくさそうに眼が泳ぐ。ソッポを向いてぼそぼそ綴るのになんだかホッとして、それから俄然、ヤル気がこみ上げた。
「ってことは!サスケはひとりん時、ただ出して終わりなんだな!?」
「だから。そういったことを、何度も何度も……」
「つまり。気持ちイイとかじゃなく、仕方ねえからシてるって感じなんだ!?」
「……まぁ」
非常に、とても下らないとしか思えない響きで彼はこくりと頷いた。しぶしぶ、とも見える素っ気無さだが、しかしそんなこと、今のナルトにはどうでもいい。
ひとりきりの間、サスケは生理的な解消でしかそうしない。愉しみではなく、身体の構造を整えるための手間なのだ。
あぁ。そんなのなんて可哀想で、もったいないのだろう。
これはもう、自分こそ教えねばならない。離れ離れでもそれなりに満たされ、かつ恋人を思い出してたまらなくなるような、そういった自慰(サスケ曰く)を教えてやらねばいけないではないか!
真正面からもう一度、ぎゅっと抱きしめナルトは笑う。思い切り息を吸い込めば、大好きなサスケの匂いがした。熱帯びた汗が淡い石鹸ややわらかい湯の香りと一緒くたになった、本能を刺激するフェロモン。
「そんなら、オレが教えてやる」
「は……?」
「めちゃくちゃ気持ちイイ、ひとりエッチの仕方。オレが全部、ちゃんと教えてやるってばよ!」
自信たっぷりで言い放てば、危険を察したのか腕の中の身体は捩れた。もぞもぞ動いて距離を取ろうとするが、だけどその抵抗は本気じゃない。提案に興味を持つためではなく、首筋を舐めるナルトの舌に気を取られているせいだろう。
本当に、こういう時のサスケは可愛い。強く吸いつき紅を刻めば、抱えた背がとても綺麗に仰け反った。
◇
向き合う形はそのままに、至近距離で見つめあう。
「ダメ。ほら、ちゃんと見ろよ」
ともすれば逸らそうとする視線を叱って、その度仕方なく掌を移動させる。再び勃ち上がったソレはすっかり完全体で、後になんて引けない。必死で隠そうと覆う指の隙間に生々しい充血が見える。覗いた先端、本来なら穿つための矢印もてらてらと滑りを浮かべていた。
「こうやって、ココんとこだけゆっくり擦んの」
彼の蜜を纏わせたまま、続いて自分の欲を嬲る。もっと強く、早く扱いて感じたい。主張する悦を懸命に堪える自虐は、馬鹿馬鹿しいくらいゾクゾクする。だからそれを覚えろと促すが、やはりサスケは首を振る。ふるふると拒否して、ただ口唇を噛むのだ。
「なんでだよ?こんなん、誰だってシてるってばよ」
あー。コレ、すげえ気持ちいい。
あえて伝え、誘ってさらに手を動かす。普段なら仕方なくしている行為だ。傍にサスケが居ない時、それ以外の方法は無くて虚しく掌に吐き出す。
初めての夜には、戸惑い揺れる眼差しで見上げてきた。無垢を犯せば痛いと泣いて、殴って蹴ってそれでも止めろと言わなかった。やがてナルトの指を覚え、慣らすために抜き差しすれば絡みつくようになる。両手くらいの数を経験する頃には、零すものもくちゅくちゅ音を鳴らすまでに増えた。まるで性を違えたみたいに溢れさせ、そして穿たれ際を迎える。
ナルト。もっと、もっとナカして欲しい。
すっかり後ろの快楽に馴染んで、やがて自ら求めるまでになった。律動する身体に腕を回して引き寄せて、両脚まで絡めしっかりと縋りつく。気持ちいい、おかしくなる。うっとりと呟き、飽きず口唇に吸い付いた。
そんな記憶を呼び起こし、浮かべる痴態に衝動を押される。教えられるまま舐めておずおずと咥え、される時より恥かしそうに尽くしてくれる。その熱い舌を思い出しながら、必死で擦って吐き出すのだ。
それが自分の常だったが、今日はなんて贅沢なんだろう。
「おんなじ風にすればいいから。な?」
空いた片手で目元を擽り、あやすためにキスも落とす。そうすればようやく、そろそろとその手が動いた。ためらいがちにぎこちなく、ゆっくりと刺激していく。目の前で自分の前で、サスケがひとりでシている。どうしようもなく、めちゃめちゃに興奮した。
「そうそう、そんな感じ」
ん、と小さく頷いて、それから微かに視線を流す。ちらりと捉える先は、ナルトの手元。雄の形を整えるソレを窺いながら、やっとちいさな呟きを漏らした。
「ン、ぁ……」
「声、我慢しなくていいってばよ。いつもみたいに、ヨくなったら気持ちいいって言っていいから」
促してももちろんすぐには変わらない。堪えながら吐息を零し、しかし指は止まらなかった。淫靡な空気に浮かされるまま、卑猥を盗み見真似してなぞる。
「そのまま、もちっと我慢すんの」
「……え?」
オレがいいって言うまで、ゴシゴシすんなよ?
コツを伝授すると、細い眉が衝動に悶えた。焦れったそうに腰を震わせ、必死になって耐えるのだ。もう、指示なんて必要ない。本能のまま貪欲に、ソコを嬲って焦れていく。
「ゃ……ぃやだ、もぅっ」
「擦りてえの?もっとやらしくシたい?」
迸る欲を調整して、己の指で制御し追い詰められる。扱きたいならちゃんと言え。耳朶を食んで囁き落とせば、掠れる声が微かに唱えた。触り、たい。
「どこ、触りてえんだ?」
「ココ、だけじゃなくて……ぜん、ぶ」
「全部って、下から?」
こくりと肯定するのに、あぁそうだと思い出す。下と言えば、大事な所も忘れていた。その前にこっち見て、と意識を捕え、精生む場所の扱いも教えた。指先で揉み込む様を、間近に見せ付ける。
「ッ、これ……っ。こうすんのも、けっこうイイから」
真剣に観察されると、さすがになかなかハズカシイ。だけど一方、かなりクる。清しい黒が、浅ましい自分をじっと映しているのだ。
どちらかというとオレはSだな思っていたけれど、こうまで燃えてしまうのだから、もしかしたら逆だったりして。
「っは、サスケェ……」
むしろこちらが、先にダメになってしまう。我慢出来ずに握り締め、夢中になって手を動かす。倣う彼も嬉しそうに咽喉を鳴らした。同じように必死になり、自涜の様を晒し悶える。
「ナルト……っふ、ァあ!」
「な、感じる?ひとりエッチ、気持ちイイのか?」
「っん、」
俯いたって、朱を掃く項は隠せない。また眼を閉じて、だけど一生懸命擦っていた。下から上へ、先端から根元へ。激しく往復し、我慢出来ない喘ぎを零す。
「ゃ、なん……何、で」
「いつもと違う?」
その差を教えろと言えば、首を振って抗っている。違う。違うんだナルト。普段は、こんな風にはならない。
「こんな……ッ。こんなに、勃起しない。いっぱい、漏らさないのに……っ」
「お前さぁ。それ、もう反則っ」
あとは黙って歯を食いしばり、そして凝視する。秘匿するはずの行為を眺め合い、煽り合うままやがて吐き出した。
「……っは!」
至近距離に向け合っていたものだから、当然ソコにもソレは降り注ぐ。互いの熱に身体を震わせ、雄を遂げた歓びに息を荒げた。
揺らぐ身体が傾いて、汗ばむ額が肩に落ちた。慣れない緊張をようやく緩めるようだが、しかしそんなの、全然甘い。教え込むべき重要はこの後。これからが本番なのだ。
熱っぽい頬を包んで、潤んだ眼を確かめる。果てたはずなのに餓えている。満足そうに呼吸しながらも腰を捩り、無意識で悶え待っているのだ。
そっと笑ってキスをひとつ。身体を離して立ち上れば、訝る視線が追ってくる。それに応えずベッド下から小箱を取り出せば、パッと頬に血が昇った。
「……お前」
まさか。驚愕する声は、既に僅かな恐怖を宿す。この中の物を使えば、自分がどうなってしまうのか。そんなこと、誰より彼自身が一番よく知っているのだ。
「そう。とりあえず出したら、次はこれ」
「必要ない!もう、充分だ!!」
初動を制し、強引に膝を掴んだ。逃げようと蹴ってくるのもなんとかいなして、無理やり開かせる。大きく晒して覗き込むが、いったいどこが、誰が充分なのか。
「うわ、メチャメチャひくついてる」
「ダメだ!止めろナルト、触るな……ッん!!」
つん、と突けばぎゅっと襞が収縮した。前から伝わるものに汚されて、温められ待ち侘びている。もう準備は出来ているのにと、刺激を求め蠢くのだ。
「お前、こんなんでよく寝れんな?」
「だから……ッ。いつもは、こんなにならないんだ」
「そっか。さっきの、そんなに気持ちよかったんだ」
見られてスるの、そんなに興奮した?それともオレが自分で出すの見て、ナカに欲しくなったのか?
今すぐ突っ込み掻き回してやりたいが、しかし必死で留まった。貫き思う存分犯したいけど、それでは日常になってしまう。
今日することは、すっかり慣れたふたりのセックスではない。彼がひとりでも満足出来る、そんな自慰を教え込む卑猥。
だからただ吐息を吹きかけ、抵抗を抑えるため軽く撫でる。縁から中心、内から外へ。放射に沿い丁寧に引っ掻けば、逆らう力は難無く失せた。強く枕を握り締め、口唇まで引き結ぶ。雄が欲しくてたまらない、歪な雌を押し込めている。
「……舐めて」
容赦なく、そこへナルトは突き付けた。指先で挟んだ滑らかな桃色は、親指ほどの太さしかない。つるりと丸くて受け入れやすいから、数年前にはよく使った。なかなか後ろで感じられない彼のために一晩中入れっぱなしにして、本気で泣かせたこともある。
もちろんサスケは嫌がった。黒髪を振って忌避するが、それでもたぶん、まだ出来ない。自分の指を入れて探り、快楽の芽を摘み射精する。そこまで教え込むのはもう少し先。
「なぁ。そこんとこが痒くてムズムズして、たまんなくなっても、全然おかしくなんてねえから」
だって、それだけサスケがオレのこと欲しいって思ってる証拠だろ?
「サスケに入りてえってオレがココすぐ硬くすんのと同じ。だから、ちっとも変じゃねえってばよ」
おそらく不安に思っているだろうことを、言葉に出して否定する。異常ではなく、飛び抜けて淫らではなく当たり前だと解いた。快楽を知った身体が、それを追い求めるのは普通のこと。受け入れていい、怖くもないのだと優しく続けた。
「そりゃ、何も知らねえ時は出すモン出してすっきりで終わりだろうけど。でも、せっかく気持ちイイこと覚えたんだから。だったらひとりん時でも、そうなれる方がいいだろ?」
その方が、オレだって嬉しい。
ダメ押しに注ぎ込んだら、噛み締めた口唇がほのか緩んだ。なにも言わないが態度で示す、そのらしさが嬉しい。そっと滑らせて、ちゃんと含んだら指先で軽く押さえた。
「拭くやつでキレイにしてるけど、舐めんの嫌だったらローション使えよ?乾いたまんまじゃイテエし、サスケは冷たいの嫌いだろ」
それから右手を押し包み、ゆっくりと導いていく。その場所に指を添えて、擽り方を教えてやった。内部までは無理でも、この程度なら出来るだろう。
「恥かしくねえから、こうやってココ弄って。そしたらもっと我慢出来なくなって、どんどん熱くなってくるから」
淫靡を増す遊戯に翻弄され、吐息がさらに乱れていく。大きく肩を揺らしながら、口中に食んだものを転がし耐える。
それが更なる興奮を呼ぶのか、一度萎えたものも再び大きさを増した。嬲れと示す間もなく、自らいじり始める。全体は擦らず括れから上ばかりを刺激し、早速さっきを復習するようだ。
「……ふ、ぅ。ンン……んっ」
片手では後ろをあやし、もう片手で前を慰める。両手で快楽を追う様は、実に見応えがあった。普段はツンと澄ましているからこそ、余計そう思う。
性を知らない純ではない。そんなものとっくに慣れ尽くしたから些細なことだと言わんばかりに、シレッと大人びて涼やかなのだ。
それなのに、この乱れようは凄まじい。嬉しそうに咽喉を鳴らし、うっとりと眼を細めて濃密な自慰に溺れている。潤んだ視線が懸命にこちらを捉える。教えられる淫らに従順に染まり、必死で訴えた。
「我慢、出来なくなってきたか?」
入れたくて、ナカがしたくてたまらないかと問えば、もはや欠片の抵抗も示さない。何度も何度も頷いて、必死で前を扱いている。よく見れば、後ろの指は少し内部に入りこんでいた。あぁ。もしかしたら、指での犯し方を教えてやるべきだったかもしれない。
しかし、愉しみは先延ばしにする方がいい。全部こなしてしまったら、面白くないではないか。
彼とのセックスはこれからも続くのだし、ずっと飽きたくなんてない。ナルトの中の試してみたいリストは、日々研鑽調査して項目を増やす一方なのだ。
そのうち、SMとかにも手ェ出したらどうしよう。
貪欲すぎる自分たちの行く末が少々恐ろしい。だけど、フワフワを纏った手錠で拘束された彼を想像すれば、まぁそれもイイかもしんねえ、と呑気に思うのだ。
目隠しも楽しそうだし、外でだってしてみたい。痛くするのは好みじゃないけど、例えば何日も我慢させたりなどはいいかもしれない。もっとも、自分がそれに耐えられればだけど。
そろそろかな?と震える掌を外させれば、べっとりと汚れている。口中のものをそこに吐き出させ、手首を掴み移動した。
「急にしたら危ねえから。ちょっとづつ押して、ゆっくりな」
入れ方を丁寧に教えてやって、後はそのまま見守った。髪を撫でて、羞恥を刻む額を宥める。つぷ、と先端がめり込むのが見えた。どうやら、痛みなどまるで感じないらしい。むしろこちらが驚く勢いで、ひと息に奥まで押し込まれた。
「んぁ……はッ、ァ!!」
恍惚と、大きく背が反り肌が震える。よほど待ち侘びていたのだろう。慣れたモノよりごくささやかなのに、嬉しげに幾度も、幾度も頷くのだ。シーツの上の指もモゾモゾ動く。より狂いたいと欲し、不自然な歓びを探している。
「まず、こんくらいな?」
小さな四角を握らせてやり、最初の震動を許した。たちまちヴヴヴと蠢いて、鈍い音が低く鳴る。体内から、響いているのだ。
「ゃッ!?」
「嫌じゃねえだろ。サスケはこれで遊ぶの好きだもんな?オナニー、大好きだもんな」
惑わされ揺れる頭は否定なのか、それとも潔い肯定か。枕からずり落ちて、それでもスイッチは押さない。停止することはせず、次の刺激へ早々押し上げた。
音が更に大きく鳴り、連動してソレの角度も増す。もうすっかりと、内と外は絡まり合って快楽を紡ぐのだ。
「ナル、ト」
触りたい。こすって、いいか?
うっとりと瞼を下ろし浮かされるように問うてくる。どうやら、かなりこの状況がお好みらしい。したければスればいいのに、奔放ではなく命令を求めているのだ。
「どこ、触りてえんだ?」
こうなれば、それに乗っかってやるのが男気だ。晒される淫らは歯軋りするほどで、玩具なんて今すぐ抜きたいというのが本当のところ。ホンモノで突き上げたいが、彼のために我慢してやろう。
「どこ擦りてえの?何してえんだ、サスケ」
「ココ擦って……自分で、出したい」
「さっきみてえに、見られたいのか?」
距離を縮めて耳元に囁けば、真っ赤に染まった顔で頷く。それからまた持ち上がったから、求められるままキスをした。あまり深くはせず、労わるようにして軽く、柔く何度も啄ばんでやる。
満足げな吐息が、まるく零れ落ちる。極めて淫らに浸りながら、どこか稚くナルトの口唇に甘えるのだ。
「ん……」
「でも、もちっと我慢な?これはまだ、準備だから」
さて、真に満足させるはこれからだ。ひとりで淫らと睦む様を鑑賞しつつ、もうひとつを取り出した。そういえば、とサイドボードを探って例の包みも用意する。
「今日はオレがしてやるけど、明日からは自分でしろよ?」
だからよく見て、ちゃんと覚えろ。
ともすれば浸りたがる視線を注意して、その前で整えていく。ナルトとすればもっといろんなものを揃えたいのだが、散財すればサスケに怒られる。大事な任務金を馬鹿なモノに使うな。辛うじて備えたパターンに少し考え、そして最もシンプルなものに決めた。
しっかりと床に固定し、慎重にゴムを被せていく。無機物はもちろん何も出さないから、彼の中だって溢れない。後始末の必要はないけど、これが一番簡単だ。
見方によっては馬鹿馬鹿しさの極みであるその手順を、サスケはぼうっと見下ろしている。時折こっそりとソレを撫でる様子だが、まぁ今は許してやろう。自分がどれほど硬くし濡らしているかを確認する度、背徳はより翻弄するはずだ。
ほら、と促し腕を伸ばせば、おとなしく従い身体を預ける。卑猥な玩具を食んだままベッドから滑り降り、震える足で床を踏んだ。
「もっとこっち……そうそう、そこで膝着いて」
待ち侘び過ぎた身体は、設えられたモノにも怯まない。ナルトが握り嬲ったこともあるから、既によく知っているのだ。あまり無理のない大きさだからこそ、より狂わせてくれる。圧迫せずぴたりと嵌り、生身の雄とは別種の快楽を齎すのだ。
示される姿勢に整えて、そのままゆっくり、後ろへ手を回す。抜き出せば、モーター音が大きく響いた。それをそのまま放り出す有様に、いつもの行儀なんてカケラも残らない。
それでも眼には微かな不安が残り、戸惑うように揺れていた。変じゃないのか、これでいいのか。こんな姿を晒しても厭わないかと、多弁な黒で訊いている。
「サスケ。すっげえ、可愛い」
だから掌を重ねて指を結び、怯える一途にしっかり応えた。
「可愛くてやらしくて、たまんねえ」
大好きだと伝えながら、だけどと思う。
たまにはもっと、別の囁きで包みたい。違う形にしたいのに、それなのに他に無いのだ。この気持ちはこんなにも溢れているのに、どうして言葉は少ないのだろう。好きとか愛しているとか、大事とか大切とか。そんなこんなを全部並べたって、ちっとも足りはしないのに。
「ちゃんと指で広げて……ほら、ここ掴んでいいから」
震える右手を肩に導き、腕を伸ばして正面から支える。
くねるモノにしなかったのは、自ら腰振る様を拝みたいからだ。しかしどうやら、どちらにしたところで結果は同じだったらしい。
「ヤ……もぅ、もう……ッッ!!」
難無く受け入れ腰を下ろし、すぐさまサスケは限界を迎えた。いったいどれだけの興奮に苛まれていたのか。内部をしっかりとした質量で満たした途端、すぐに震えて啼き漏らす。
生々しい熱が頬にまで飛び散った。傍にいたのだから当然だし、もちろん気持ち悪いなんて思わない。独特の匂いや粘度まで、あぁ間違いないと確かめる術。浮かされすぎた声が甘ったるく呼ぶ。
「なると……。出た」
ぽやんと報告する風情は、色っぽいというよりやたら無邪気だ。そのくせ申し訳なさそうに頬を擦っては口唇を拭い、自身の精を清めようとする。やがて指では足りなくなったのか、猫のようにぺろぺろと舐められた。
「……うん。ちゃんと自分で、ひとりでヨくなれたな?」
髪を撫で、キスも落として褒めてやれば腕の中の身体が傾ぐ。どうやら少し、何故だか首を捻っているようだ。
ここまで濃厚なセルフプレイを見せてくれたのに、いったい何がおかしいのだろう。
(まぁでも。そんなのもう、どうだっていいってばよ)
いつもよりかなり感じさせナカで極めさせたとはいえ、これはまだ二度目の際。もう一回イかせても、この様子なら大丈夫だろう。既に彼は、出さない悦も覚えている。
不自然に満たされたまま、ぺたんと腰を下ろしている。微かな違和感は覚えるが、さぁセックスはこれからだ。よいしょと持ち上げ開放して、ついでに両脚も抱えあげる。
床に背を着かせ、大きく開いて確かめてみる。あんのじょうサスケのソコは、ナルトが欲しいと切なげに震えていた。
◇
繰り返しになるが、サスケはなんだかズレている。
「……んッ!」
俯いて口唇を噛み、違うんだと黒髪を振る。ベッドに腰掛けるナルトの目前。膝を立てすべて晒しているくせに、絶えず擦って扱いているのに、こっちを向くなと無茶苦茶を言う。熟れる息に濡れた音が混じる。鈍い響きもはっきり聞こえた。
「今日は自分でスるっていったの、サスケだろ?」
「っく……ぅ、」
「そうそう。ほんと、ヤラしいってばよ」
いったい、なんでどうしてこうなったのか。
キッカケを作った身でさえ謎なのだが、彼はどうやら、恋人の前で行う自慰にハマッてしまったらしい。
『……なぁ、』
久しぶりに、見たくないか?
さっきだってそう囁き、実に熱っぽく見つめてきた。もちろん、それが嫌なはずもない。だから頷き促せば、殊更ゆっくり服を脱ぎ去る。焦れったそうにソレを擽り、溢れさせれば手を翳した。糸引く淫らを晒し、悠然としゃぶりつくのだ。
ちいさな玩具だって自ら求めた。慣れた仕草で潤滑剤を塗り込め、切なく呼吸を紡ぎながら満足げに飲み込んでいく。そして周辺を辿って雄を擦り、嬉しそうに喘いでいるのだ。
「あァッ、ん……っ」
口元へ無機物を差し出せば、厭わず舌を絡めた。おかしい。自分はここまで仕込んでいないはずだ。それなのに咥えて嘗めて、唾液を零し顎まで汚す。ナルトのソレと同じように、少し恥かしそうに湿らせていくのだ。
今度は、赤く凝ったちいさな粒を摘まみ始める。利き腕が左であるということに関係するのか、右利きのナルトがより多く触れてきたのがそちらだからか。心臓の上ばかり嬲って、狂おしく啼く。
いやいやいや。だから、おかしいってばよ?オレはあの時、そこまで教えてねえだろ!
「ぁアッ! ……ると、ナルッ」
「しろいの、出る?」
「ん……」
こくこくと肯定するのを頷き許せば、指の間にたちまち精が流れた。恍惚に閉じたがる瞼に抗い、視線を重ねたまま絶頂を魅せつける。
「イッた?」
「……出し、た」
「なら、ちゃんと見せろ」
まだだ、確かめさせろとひそやかに請えば、汚れた掌を退ける。吐き出したばかりのソレではなく、剥き出すのは別の場所。ナルトの意を違えず読み取り、膝を着いて示すのだ。
「あぁあ。ったく、こんなにしちまって」
その部分はいっそう赤裸々を増していた。誘われるままベッドから降り、握ったモノをそのまま渡す。
腰を屈め覗きこめば、興奮する様がはっきり映った。震動を飲みこんだまま、強い収縮を繰り返す。ほんの少し指を触れただけで咥えたコードが揺れるくらいに、もっとと口を開くのだ。
収めさせたまま無理やりに進入し、より深く押し込める。ヒ、と零れる声はもはや悲鳴に近い。それでも許してなお強請り、まだ足りないと腰を振る。縋るように異物を掴み、声を殺して身悶えた。
「なぁ、サスケ」
まったく、どこまでこの男は淫らなのだろう。こうまで堕とした己に万歳三唱だ。だからもっと、もっと恥かしくさせて高めたい。甘ったるく耳朶を嘗め、擽り噛んで囁いた。
「オレがいない間。お前いつもひとりで、そんなやらしいコトしてんだ?」
その様を想像すればとんでもない衝撃である。ひとりで前を嬲って玩具まで取り出し、ゆっくり宛がい飲み込んでヨがる。卑猥に悶えて準備をし、やがて跨り腰を振るのだ。
そうだ。誰もいない部屋で、きっと呼んでいるのだろう。
ナルト。ナルト、気持ちいい。お前の言うとおりにしたらこんなにイイんだと、激しく上下しながら啼いているのだ。
たまんねえなと背中を撫で、浮かんだ汗も嘗め取っていく。真っ直ぐな骨がふるりと震え、そしてサスケは振り返った。
きょとん。
その言葉まんまの顔で、ものすごく怪訝にナルトを眺め瞬いている。
「馬鹿か、お前は」
「……はい?」
いかにも呆れた、と言わんばかりに、唐突な冷静でため息をひとつ。ぽかん、と間抜けに口を開けば、その眼がいっそう眇められた。
姿勢を戻して、正面に向き合う。ほんのちょっぴり曲がった口元からして、気持ちイイのを邪魔されたともしやご立腹なのだろうか。
「ひとりでこんなことをしてみろ?ただの、間抜けじゃないか」
「エ……?」
つまり、どういうことだってばよ?
ウッカリ例の口癖で返せば、苛立つ声が答えた。
「どういうこと、も何もあるか」
「だったらサスケは……オレがいねえ時、どうしてんだ?」
もしや、まさかと慄きながらいつかの問答を再現する。
「だから、どうするもクソもあるか」
「だって、だって!前擦って出すだけじゃ、満足なんて出来ねえだろ!?」
「しつこいぞナルト。お前はそこにこだわるようだが、触って出して始末して終わり。それ以上でも、それ以下でもない」
きっぱりと断言されれば、床にべったりと沈みたくなった。
いったい、何がどこでどうなったのか。あまりに味気ない彼の独り寝を慰めるために調教したはずが、どうして何も変わらないのか。何故、同じ会話を繰り返すのか。
これ以上は不毛と察し、ナルトは地味にヘコんだ。自分の前ではこんなにイヤラシイ自慰をするのに、ひとりの時は相変わらず。だったらもう、これはセルフでもなんでもない。ただこういったプレイで、セックスの一環だ。
(あれ……?)
その時ふいに、ふと何かが引っ掛かった。どこかに何かを突っつかれて窺えば、頬がほんのり染まっている。とても照れくさそうに、淫らを見せる時よりもっともっと恥かしそうに、小さくちいさく紡ぐのだ。
「お前がいないなら、感じない」
「……サスケ?」
触る時には、まぁ……思い出さなくもない。それでもおかしくならない。こんな風になんて、まるでならないんだ。
「そこにいるから抑えられない。傍にいるから、欲しくなるんだ」
ものすごく、強烈な爆弾が炸裂した。それでもその声は低く掠れて、唸っているとか、凄んでいるというに近い。艶っぽさなんてほんのちょっぴりもないけど、だけど必死に明かしてくれた。とんでもなく真摯に、健気に教えてくれるのだ。
ナルト。オレは淫乱でもなんでもない。
お前とするセックスが、ただ好きなんだ。
「だから。オレにとって自慰というのはつまり、」
「あぁあ!?わかった、もう解ったからサスケ!!」
そうしてまたも真面目に語ろうとする、その律儀を遮るため腕を回した。ぎゅぅぎゅうにハグをして、せっせとキスも繰り返す。
あぁ。もう、ホントに。
まったく以って、コイツはどうしようもなくズレている。
ズレ過ぎていて、驚き呆れてぶっ飛んで。
そして一周まわった結果、大好きがもっとずっと大きくなるのだ。