【 seesaw-game ~ - ~ 】
それこそ一世一代の決意をして好きだと告げたら、意外とあっさり、そうかと頷かれた。
『何故だ、どうしてだと何度言っても、友達だからだの正直よくわからねえだの、お前はいつも色々勝手を言っていたが』
―――好きだってのが、不思議と一番納得出来るもんだな。
そしてサスケはポツリと言った。多分、オレも同じなんだろうな。
『上層部に対する憎しみは捨て切れない。この里の全てを容認することは出来ない。きっとそれは、一生変わらないだろう。でも、それでも、』
それでもオレは、もう一度ここで生きようと思う。
お前がいるなら生きていたいと、そう思えるんだ。
深呼吸するように何度も不器用な間を置きながら、どこか拙く紡がれた彼なりの精一杯の告白にびっくりして。
とにかく嬉しくて幸せで、でもなんだか信じられなくて。
分厚い鉄柵から必死に腕を差し入れ、痩せた頬を包んでナルトは泣いた。
みっともなく鼻水まで垂らし、ぐしゃぐしゃになった顔でサスケサスケと繰り返す。それでも彼は、馬鹿になんてしなかった。
フンと吐息も鳴らさず憎まれ口も叩かず、ただ静かに笑っている。怖々触れるナルトの指に掌を重ね、少し照れ臭そうに、そしてとても優しく微笑んでいた。
冷たい肌が切なかった。儚く瞬くその黒が、どうしようもなく愛おしかった。
だから早速、キスをした。
10センチ四方にも満たないささやかな空間になんとか顔を押し込めて、不格好に口唇を重ねる。そうしてもう一度好きだと言えば、サスケもまた、コクリと頷いてくれた。
『……サスケ。好き、だってばよ。オレ、お前が大好きだ』
『わかってる。……ナルト』
牢を訪ねる度、何度だって繰り返した。内緒話みたいに囁き合い、ふたりでいつも、こっそり笑った。
監視役がふわっと欠伸をする狭間、無駄話の隙。
夢中で手を伸ばし合い、まるで約束するように指を絡めた。じめじめと暗く澱んだ空気の中、鉄格子に隠れキスを数えた。
やがて牢から放たれたサスケの監視役をナルトが命じられたのは、幸いというべきかこれもひとつの縁というべきか。
いや。きっとそれは、自分たちを密かに見守り応援してくれた皆からの祝福なのだろうとナルトは思う。
ふたりで暮らす家だって、木遁使いの頼れる隊長が小さいけれどこざっぱりと居心地の良い物を建ててくれた。うちはの家から思い出と一緒に様々な家財道具を運び入れる時には、同期の連中が率先して手伝けしてくれた。
そしてそこで過ごす初めての夜。
『やっと二人きりになれたな……サスケ』
『あぁ。長かったな、ナルト……』
見つめ合うふたりは、まるで某曲のように盛り上がっていた。まさしく、今夜からはどうぞよろしくな状態である。
何しろ、想いを確かめ合ってからが長かった。常に檻に阻まれ時間に追われ、更にはいかついオッサンたちに見張られていたのだ。
ようやっとそこから解き放たれた充実感と、障害を乗り越えたのだという達成感。そしてぴかぴかの部屋にふかふかのベッドというシュチュエーションは、ナルトだけではなくうっかりサスケまでも変な気分にさせた。
そして燃え上がるまま浮かされるように、至極アッサリと一線を越えてしまったのである。
◇
さて、そんな風にしてふたりの甘い同棲生活がスタートした(うずまきナルト談)わけだが、もちろんそれで一事が万事上手くいくわけでもない(うちはサスケ談)。
飯の味付け、掃除の仕方。植物の世話にテレビのチャンネル権、ついでに慣れないセックスのあれこれ。
毎日毎日、なんだかんだと言い争っては殴り合い、蹴り飛ばしても決着がつかない場合は必殺技まで飛び出す始末。
しばらくしてサスケは晴れて復帰を許され、ナルトも上忍に昇進した。そろそろ大人と言われる年齢になったけれど、だけどそれでもやっぱり、どうしたって相変わらずでいつも通り。
「なぁサスケ、サスケェェェェ~~ッッ!!」
「ウルセエぞこのウスラトンカチが!」
任務に家のやり繰り、そして仲間と大騒ぎ。
忙しい日々は時に擦れ違いを生み、やっぱり喧嘩は尽きないけれど。それでもなんとか日々楽しく面白く、ふたり暮らしを続けているわけなのだ。